キーボードの現状

海外ではキーボードのカスタマイズが活発

海外ではキーボードのコミュニティが活発なため、カスタマイズや自作したキーボードを持ち込んで情報交換や実際に触ってみる、といったイベントが行われています。

Instagramでもキーボード画像は多い

Instagramのハッシュタグで検索すると、2018/5/7時点では、
– #mechanicalkeyboard:投稿91,446件(ノイズを除くと推定54,000件)
– #keycap:投稿13,427件
– #メカニカルキーボード:投稿195件

ただし、「#mechanicalkeyboard」で検索すると、カー用品など関係ないものがおそらく40%ほどは混じっているため、実際には54,000件程度でしょうか。

日本製高級キーボードが人気

画像投稿サイトのInstagramやレア物グループ購入サイトDrop(旧名称:Massdrop)などを見ていると、日本製の高級キーボードをよく見かけたり、日本語が印字されたキーキャップが販売されているのを目にします。
海外の大手掲示板Reddit(オバマ元大統領が書き込んだことでも有名な)でも、メカニカルキーボードの入門として日本製キーボードが挙げられています。

Happy Hacking Keyboard(日本製)

キーボードに興味がない人でも「あ、なんか見かけたことがある。エンジニアの人が使ってたな。」という声をよく聞きます。キーキャップに文字の印字がないため、斬新で印象に残っていたという人も。(文字が印字されたシリーズもあります)
富士通の子会社でPFUという会社が販売しています。

Realforce(日本製)

東プレ(Topre)という会社が販売していて、銀行の窓口業務用キーボードは東プレ製のものが大半とのことです。(古い情報ですが2002年頃は国内は100%が東プレ製とのこと)

日本語キーキャップも

日本語が印字されたキーキャップも見かけますが、日本語圏向けではなく、英語圏・海外向けのようです。
日本語版キーボード(JISキーボード)の「2」のキーは「”2ふ」が印字されていますが、海外販売されている日本語キーキャップは、「2」のキーは「@2ふ」が印字されています。これは英語圏などのキーボード(USキーボード)が、そのように配置されているため、そのままの配列に日本語を印字したようです。

(参考)長崎外国語大学 USキーボードと日本のキーボードの違い

日本語キーキャップは、寿司や顔文字、桜、富士山などが印字されているケースもあり、外国人が好きそうなデザインになっていることが多いです。

ユニーク性のあるレア商品が海外で爆発的に売れる

Drop(旧名称:Massdrop)というレアものがディスカウント価格で入手できるコミュニティ型グループ購入サイトがあります。Dropでは、ファッション、アウトドア、DIY、化粧品などの趣味系カテゴリーを扱っているのですが、その中でもメカニカルキーボードというカテゴリーがあり、キーボード界隈では非常に有名です。

Drop

Dropとは?

コミュニティを形成していて、なんの商品が欲しいかアンケートを取って、一定数以上になったら販売者とディスカウント交渉をして、みんなに販売するという仕組みになっています。
Dropでは、毎日商品がアップされるため、私はメカニカルキーボードのカテゴリーを毎日チェックしています。(下図はそのスクリーンショットになります。本来は左上に通常価格とディスカウント価格が表示されるのですが、特別価格となっているため、販売メーカーを配慮して、一般公開されないようにDrop側で気をつけているそうです。そのため、価格はこちらで削除したものを掲載しています。)


引用元:Drop

毎日チェックしていると、なんの商品がたくさん売れるのか、だいたいわかるようになってきます。傾向としては、キーキャップのレアものとDropコラボ商品(画像に「Drop Made」と表示されます)が特に人気が高いです。キーボードはAmazon.comなどで普通に買って入手できるから、レアもののキーキャップなどが注目されるのかもしれません。
販売数が多いものだと500件ほど売れたり、逆に1件程度しか売れないものもあります。

特に販売数が多かったキーボードアイテム

Hammerブランド、MiToブランド、SAプロファイル(キーキャップの形状でやや高さのある一般的なもの)のものは、特に販売数が多かったです。以下の「Drop x MiTo DSA Legacy Custom Keycap Set」というキーキャップのセットは、私も購入しました。DSAプロファイル(キーキャップの高さが低めでキーキャップ自体に高低差がないため、横から見ると真っ平ら。一般的にはほとんど見かけない)は他のキーキャップの形状と比べて販売者も少なく、Dropにもあまり出てこないためか、相当な数が売れていました。2017年〜2018年でウォッチした限りでは、10ヶ月間に1件程度の販売頻度でした。

Drop x MiTo DSA Legacy Custom Keycap Set

Hammer SA Carbon Artisan Spacebar

Idea23 Bubble Tea Artisan Keycap

引用元:Drop x MiTo DSA Legacy Custom Keycap Set
引用元:Hammer SA Carbon Artisan Spacebar
引用元:Idea23 Bubble Tea Artisan Keycap

キーボード情報サイトがない現状

キーボードに興味を持ち始めても、種類から買い方まで網羅している情報サイトが発見できず、非常に苦労しました。TSUKUMOさんの「交換用キートップまとめ特集」やセンチュリーさんの「CHERRY MX メカニカルキーボード音の違い」、ブロガーさんが解説している記事などがあり、それらを参考に情報収集しました。
2017年にVortex Coreというキーボードを海外から購入しましたが、その時はVortex Coreのレビュー記事が日本だと2件程度しか存在せず、やむをえず海外の情報サイト(RedditやDrop、geekhackなど)を参考にしました。
(2018年現在はVortex Coreが日本で発売されることになったため、レビュー記事が増えています。本当にありがたいことです。)

海外ではコミュニティも活発なので、色々と質問やディスカッションができますが、日本だとそのような場がない状況です。

どんな種類があるのかわからない

キーボードは、タイピング音、打鍵感(タイピングした時の感触)、手触り、形状、そして見た目も多種多様です。自分がほしいと思うものにたどり着くまでの情報収集が本当に大変です。
具体的な種類については、別途ご説明します。

購入方法がわからない

日本製の高級キーボードに関しては、Amazonや家電量販店で購入することができるため、特にハードルは高くないです。ですが、海外には他にも素敵なキーボード(VortexやPlanckなど)やキーキャップがたくさんありますが、それらを入手するためには日本の海外輸入店から購入するか、海外購入サイトで購入して日本に送ってもらうしかないです。
私は、海外サイトの「Mechanical Keyboards Inc」、「Drop」、「Banggood.com」で購入したことがあります。「Amazon.com」から海外配送してもらう方法もあるのですが、2017年時点では日本への海外発送しているキーボードが少なく、ほしいものが買えませんでした。
具体的な購入方法については、別途ご説明します。

カスタマイズ方法がわからない

キーボードのレイアウトは、日本のJISレイアウト/USレイアウトか、Windows配列/Mac配列か、DSA/SA/OEM/Cherry/XDA/DCSか、などチェック項目がたくさんあります。
また、Planckのようにキーボードをはんだ付けして組み立てないといけないものまであります。
最近では、マスキングテープを使ったお手軽DIYが、DIY女子の中で流行っているようです。
具体的なカスタマイズ方法やDIYについては、別途ご説明します。

キーキャップの交換自体は非常にかんたんです。キープラーと呼ばれる道具でキーキャップを引っこ抜くだけです。

スマホもあるしキーボードって本当に必要なのか

デバイスと利用シーンが多様化しているため、PCを使わずにスマホで完結している、という人もいると思いますが、会社でキーボードを使って業務を行う人にとっては、やはりキーボードは必須アイテムとなります。もし、AIと音声認識が発展していったら、音声で指示するだけで業務ができるようになるのかもしれませんが、それはまだ遠い未来かと思います。
タブレット端末の利用シーンも増えましたが、「結局キーボードがないとダメだった」という記事が2016年に出ています。私もSurface Proを仕事で使うことがありますが、キーボードがないとさすがに不便です。

どんな人がキーボードにこだわるのか

私の周りにいる30代〜50代の友人10名程度にヒアリングしてみたところ、「30代〜50代で、会社でPCキーボードを仕事としてメインで使う必要のある職業(エンジニアやデザイナーなど)の男女」がキーボードにこだわっているようです。会社で見かけたことがあると言っていました。

なお、20代の大学生〜新卒(文系・理系)の後輩6名程度にもヒアリングしたところ、いずれもPCを持っていて、論文や研究はキーボードを使って作成したとのことです。
キーボードに種類があることはまったく知らなかったことと、キーボードの打鍵感の違いを伝えてもピンときていませんでした。

ただし、1名だけメカニカルキーボードを利用している学生がいて、「たまたまメカニカルキーボードを知って、打鍵感の気持ちよさからハマった。ゲームをやっている人だとメカニカルキーボードが必須なので。」とのことでした。
20代の若い世代でも、ゲームをきっかけにキーボードにこだわる人も多いようです。

私がヒアリングした人の属性に偏りがあるため、上記情報しかわかりませんでしたが、ほかには、ゲーマー(オンラインゲームなど)、カスタマーサポート業務やキー入力業務をする人、コンサルタント、アーティスト(持ち物にもオシャレに気を使うため)などもターゲットになると想定しています。

最近の話では、「会社で、デスクトップPCを撤廃してノートPCに移行した影響で、キーボードが使いにくくなった」と友人から聞きました。そこで、ノートPCにキーボードをつけて使っている人を見かけたとのことです。私もノートPCを主に利用するため、キーボードをつけて使っています。

キーボードの市場規模

市場規模の金額が載っているリサーチ資料は有料だったため、まだ閲覧できていませんが、2017年12月にGfkジャパンが発表したプレスリリース「「パソコンゲーム周辺機器の販売動向」 – 市場は4年で2倍に」によると、eスポーツの盛り上がりもあって、ゲーミングキーボード(パソコンゲーム用キーボード)を含むパソコンゲーム周辺機器の市場が伸びているそうです。また、「ゲーム用キーボードの税抜き平均価格は一般モデルの約3倍となる8,200円に上昇した」とのコメントがあり、伸びていることがわかります。なお、キーボードはパソコンゲーム周辺機器市場の2割弱を占めている、とのことです。


引用元:GFKジャパン パソコンゲーム周辺機器の販売動向プレスリリース

ゲーミングキーボードは、高速入力やキーの複数キーの同時押し、長押し、反射的に強めに打つ(押した感がわかるように打つ)といった動作が必要になることから、主にメカニカルキーボードが使われています。

ゲーミングキーボードは、光るタイプのものが多く、以下の画像のように派手なデザインが多いです。また、キーの「WASD」だけ色を変えてあることも多いため、すぐにわかります。これはゲーム中の移動が「W」キーは「↑」方向に、「A」キーは「←」方向に、「S」キーは「↓」方向に、「D」キーは「→」方向に動く操作になっていることが多いため、わかりやすいように色を変えています。

キーボードの世界観が浸透した未来像

会社の規模や業種によっても大きく変わってきてしまいますが、2018年現在の国内だと、会社の中で50人に1人か2人ぐらいがキーボードにこだわっているような感じではないでしょうか。(会社でいうと、1つの部門または本部の中で、キーボードにこだわっている人を数人見かけたことがあるな、ぐらいのイメージです。)

将来的には、それを5人に1人がPCキーボードにこだわりを持っている(会社でいうと1島に1人ぐらいはキーボードにこだわっているイメージ)、カスタマイズに必要なキーキャップを海外輸入せずに国内でも購入することができる、というぐらいに普及されるとうれしいなと、考えています。みなさんが、少しでもこだわることができるキーボードを見つけて、「毎日なんだかワクワクする、1つ楽しみが増えた」といってもらえるような普及活動・活発化に貢献できましたら幸いです。

更新履歴

  • 2021/04/11 Massdropの名称変更に伴い修正、一部情報追記
  • 2018/05/03 公開